駅名動画に100%必要ない「捏造」という作業のお話
お久しぶりです。牛乳豆腐です。
私が駅名動画を作り始めてからかれこれ6年程経とうとしているのですが、ここまで続けていると自分の動画に対する主義というか掟というか、いわゆる「ここは譲れない」みたいな決まり事が生まれてくるんですね。
「このアーティストの楽曲には必ずこのボーカルを使用する」だとか「このアニメーションに掛ける時間は何秒でどのように登場させて...」だとか皆さんにも少なからず一つはあるのではないかなと思います。
私はそのようなルールが脳内で凝り固まった結果、こんなことを考えるようになってしまいました。
「もう走ってない電車の写真とか使いたくなくね?」
これは私の根っからの現実主義な部分が大きく絡んでいて、動画を制作・投稿した時点で実在する鉄道車両でなければその動画に使用したくないという醜いプライドなわけです。
駅名動画というものは背景として動画内容に関連する写真を用いるのが定説になっていますよね。(最近は写真を使わなくてもスタイリッシュに魅せられるバケモンみたいな動画もありますがそれはまた別のお話)
一般的に、wikipediaで特定の鉄道路線を検索するとそのページのトップに出てくるものが背景写真として使用される場合が多いのですが、中途半端に鉄道知識を入れてしまった私はその写真が「本当にその車両が今も走っているのか?」といったようなシンキングタイムを挟んでしまうのです。そしてもし走っていなかった場合、その写真は私の中で「使えない写真」として扱われるようになります。
というのも、wikipediaのトップ写真は路線によって10年以上変更されていないものも多く、そこから現在までの間に当該の鉄道車両の引退、他線区への転属、機器更新などが行われている場合が多々あります。そのため、あまり目を向けられない路線を題材とした動画を作るときは「使える写真」探しにある程度の時間をかけています。
では、どれだけ探しても「使える写真」が見つからなかったときはどうしましょう。普通は妥協して「使えない写真」を使ったり動画制作自体を諦めたりしますよね。しかしプライドが天井を突き破っている私としてはどちらも避けたい。そこで辿り着いた先が今回ご説明する「捏造」というものになります。
- 捏造ってなに?
ねつぞう【捏造】- 本当は無いことを、事実であるかのように作り上げること。(新明解国語辞典 第五版 - 三省堂より引用)
この言葉になぞらえ、先述の「使えない写真」を画像編集によって現在の姿に変えることで「使える写真」にしようというものです。
GoogleやTwitterでの画像検索で現在の姿を調べておき、それをもとに表示されている行先の変更(駅名改称による)、行先方向幕の三色/フルカラーLED化(機器更新による)、前照灯のLED化(同上)などを行うのが主な業務です。
- 使用実績
文章で説明するよりも実物を見てもらう方が早いので、例として一つご紹介します。
wikimedia commonsより引用 - 特急ソニック様(一部改変済)
こちらは7月17日に投稿した『aiko「カブトムシ」でJR関西本線の駅名を歌う』 (https://www.youtube.com/watch?v=l_DirerA70g)で使用した画像です。一見すると普通の201系の画像ですよね。
しかしこの画像、撮影年が2007年であり、元画像には決定的に使えない要素があります。それがこちら。
wikimedia commonsより引用 - 特急ソニック様(元画像)
行先表示器が紙幕なんですよね。現在この線区を走行する201系はすべてLED表示器に変更されているため、この状態の編成を目撃することはできません。もしLEDになっていない編成がいたとしても、大和路線を含むアーバンネットワーク全域では路線記号の使用が始まったことで方向幕にも路線記号が併記されるようになったため、二段構えで「使えない」要因が待ち受けているということになります。
このような捏造は、主に「当時シリーズ」という「特定の鉄道路線を〇〇年当時の駅名で歌う」動画で行うことがほとんどで、時代が古ければ古いほど使える画像が少ない現状において有効な打開策になっています。
wikimedia commonsより引用 - gohachiyasu1214様(一部改変済)
こちらの画像はサブ垢同居人のチャンネルから投稿されている『
これには困りものでしたが、同じ車両で運行されていた「金星」という列車の画像を利用し、そのトレインマークを九州鉄道記念館に保存されている「月光」のものに書き換えることでなんとか乗り切ったというわけです。
wikimedia commonsより引用 - gohachiyasu1214様(元画像)
- 捏造ってどうやるの?
よほどの変人でないと実践してみようなんて考えないとは思いますが、一応ノウハウを書き記しておきます。この技術は「ウソ電」と呼ばれる「実在しない鉄道車両を生み出す鉄道趣味」にも応用できると思うので、よければ参考にしてみてください。
私は「GIMP2」というフリーの画像編集ソフトを使って捏造を繰り返しています。
~GIMPの使い方とダウンロード方法はこちら~
フリーソフトながら非常に使い勝手が良く、画像の切り抜きや色調補正など様々なツールを利用できます。
まず初めに「使えない写真」(元画像)と、上から被せる用の写真(最新画像)の2種類を用意します。この時、2枚の写真は似たような角度であると編集しやすくなります。今回は両端の駅が同時に駅名改称を行ったことで突然ほとんどの画像が使えない写真化してしまった絶望的な路線・阪急電鉄京都本線より、9300系の行先を「河原町」から「京都河原町」に変更する作業をしたいと思います。
wikimedia commonsより引用 - oonnuuoo様(上/以下「素材」)
wikimedia commonsより引用 - Juliet・Nanami様(下/以下「供給元」)
捏造の素材となる上の画像、素材供給元となる下の画像をGIMPの「ファイル→開く/インポート」で両方とも開きます。
すると、選択した写真がタブのような形で同時に開くことができ、自由に行き来できるようになります。
次に供給元を開いた状態で左上のツールボックスから「自由選択」を選び、行先の部分だけ選択します。この「自由選択」はクリックで点を複数打つことで選択範囲を決めるモードで、非常に自由度が高いのでオススメです。
選択した範囲を右クリックで「編集→コピー」、素材の方に戻り、「貼り付け」ます。
素材の方向幕があった位置に重ねることはできましたが、これでは大きさや色が少し違うのでまだ違和感がありますね。
次に行う作業が大きさと角度の調整です。ツールボックスの「拡大・縮小」「回転」「統合変形」を使用することでそれぞれの調整が行えます。機能の詳しい部分や使い方については今回は割愛します。
角度と大きさの調整を行いました。あとは周りの黒い部分が邪魔なので、その部分を消す作業です。「消しゴム」を選択し、黒い部分を慎重に消していきます。
ここで、LEDの色味を合わせるためにメニューバーの「色」から「彩度」や「色温度」を調整することで、より違和感のない画像を作ることができます。
そして完成した画像がこちら。
イイ感じじゃないですか。これで「使える画像」になりました。(もっとも、阪急とかいう会社は頻繁に顔を変えたり中間車を抜いたりするので本当に使えるかはわかりませんが...)
これを応用すればパンタグラフを菱形からシングルアームに換装したり、ドアを塞いだり、車体を塗り直したりできるようになります。そのあたりの上級編については気分次第でまた今度。
- 総括
つらつらと持論を織り交ぜながら最近の趣味について語ってきましたが、こんなの結局制作者側のエゴであり勝手なこだわりなので実際のところ視聴者はそんなところ気にしてないんですよね。私も他の作者様方の動画についてケチをつけることはしませんし、それぞれの色として考えています。
興味を持った方はやってみるのもいいと思いますが、自分がやっているからといってやっていない人に文句をつけるのはくれぐれもしないようにしてくださいね。
以上、最近やっている変なお遊びのご紹介でした。